カジノ法案(IR推進法案)とは?日本でのカジノ解禁はいつ?

「IR(統合型リゾート)推進法案」、いわゆる「カジノ法案」が2016年に成立し、日本にもカジノが解禁される日が近付いています。
しかし治安や依存症に関する不安から反対意見も根強く、IRの整備も慎重に行われています。
このページでは「カジノ法案とは?」といった基礎知識から、「IRがあるとどんなメリットやデメリットがあるのか」「カジノは日本のどこにいつ頃できるのか」などの詳しい知識まで解説します。
カジノ法案(IR推進法案)とは?
「カジノ法案」と言う名前なのでカジノだけを作る法律だと勘違いされがちですが、この法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」です。
この「特定複合観光施設」のことを「IR(統合型リゾート)」と呼びます。
この法案はIRの整備を推進するために大枠で作られた法律で、IRの方向性や基本事項について定められています。つまり、この法案では「統合型リゾートを作ります」という大枠が定められており、その中にカジノが含まれている、ということになります。
海外ではマカオ・ラスベガス・モナコなど様々な都市で統合型リゾートが建設されており、それに倣った形で日本にもIRを作ることが「カジノ法案」を通じて決定されたということになります。
2018年には「特定複合観光施設区域整備法」が施行され、統合型リゾートの区域制度やカジノの規制などについて詳しく定められました。
カジノ法案(IR推進法案)の目的
では、カジノ法案(IR推進法案)を作る目的は何でしょうか?
これはカジノ法案の総則に記載されているので、これを要約して説明します。
「統合型リゾート(IR)」の整備の推進によって、まず「観光及び地域経済の振興に寄与する」ことが期待されています。
つまり、リゾート型の観光地を地方に作り、その自治体にもっとお金が入るようにしよう、という目的があります。
さらに、「国際競争力の高い魅力ある滞在型観光」が出来るようになります。
現在日本には、「MICE」と呼ばれる会議・旅行・展示会といったイベントが1ヶ所で可能な施設がありません。そのため、世界で通用する規模の国際展示場を作るという目的で作られています。
最後に、IRはカジノ施設を含むため、国が健全にカジノを管理する、という目的も含まれています。
IR(統合型リゾート)とは?
IR(統合型リゾート)と聞くと「カジノ施設」のイメージがあると思いますが、IR推進法案ではカジノの面積がリゾート全体の3%以下になるように定められています。
「IR」は国際会議場・展示施設などのMICE施設、ホテル、ショッピングモール、レストラン、劇場、映画館、スポーツ施設、温泉といった非常に多くの施設が一体となっており、カジノはその一部に組み込まれている、ということです。
無論、カジノがIRの税収を支える大きな柱であることは言うまでもありませんが、ギャンブルが好きな方だけでなく、子供からお年寄りまでどんな方でも楽しめるリゾートが「IR」なのです。
海外の例
海外には多くのIRがあり、世界中から人気を集めています。特に有名な都市のIRについて解説します。
・シンガポール
シンガポールは日本のIRが手本とするリゾートが多く、屋上が大きなプールになっている「マリーナ・ベイ・サンズ」や島全体が観光名所である「セントーサ島」などカジノを含む多くの観光地で賑わっています。
・ラスベガス
ラスベガスは言わずと知れたカジノの名所ですが、実はカジノ売上よりその他の売上の方が多いんです。自然観光、ショッピング、ショー観覧など、エンタメ満載の街が観光客を迎えてくれます。
・マカオ
税収の8割をIRが占めるマカオは、日本からの観光客も多く訪れています! ホテル内を運河が流れる「ザ・ベネチアン・マカオ」、大型のカジノが多いタイパ島など、マカオ地区全体が一つのリゾートと言えるでしょう。
カジノ法案(IR推進法案)のメリット
続いては、日本にカジノを含むIRが出来るとどういったメリットが発生するのか?について解説します。カジノ法案には様々な賛否があり、そのうち賛成の方は当然ながらメリットに大きな価値を感じていると言うことになります。まずはIRの利点について見ていくことにします。
経済効果
まずは「経済効果」について解説します。
1つ目に「カジノ税の収入」が思い浮かぶ方も多いでしょう。カジノによって税収が上がれば、その地域の新たな財源として利用できるようになり、公共サービスがより豊かになっていきます。
さらに、「海外からの観光客の増加」も見込まれます。観光立国を目指す日本ですが、現在「国際会議場」「国際展示場」といった施設(これを「MICE施設」と言います)が少なく、大きな利益を見込める団体客の誘致が難しいという現状があります。
そのためIRを作ることにより、国内外から観光客を誘致することができ、MICEを目的とした団体の来訪を見込める、と言うメリットがあります。
新型コロナウイルスによる規制が緩和される中、IRの経済効果はかなりの期待が寄せられています。
雇用の創出
もちろん、その地域の「雇用の創出」もメリットです。一大リゾート地を目指すIRでは、カジノだけでなくショッピングモールやホテル、映画館、レストランに展示場など非常に多くの施設がひしめき合っています。そのため当然ながら多くの従業員が必要となり、必然的に雇用が生まれます。
最近は大手カジノの協力のもと、日本でもカジノディーラーの資格を取れる学校などが増えているようです。その地域の方がIRに従事することで雇用が生まれ、その分税収も上がることになるので、「新たな財源」として複数の都市が誘致しているのも頷けます。
地域活性化
そして3点目に「地域活性化」と言うメリットについて見ていきます。
もちろんリゾート地なので、観光客はその場所に向かうことになります。
IRに行くための交通インフラが整備されるため、その地域の住民の方が暮らしやすくなります。
また、観光客の方はIRにも足を運びますが、当然ながらIR以外にもその地域の観光を行うユーザーも多いでしょう。
IRを含むその地域が観光地として利用されるようになれば、その地域に訪れるユーザーが増えます。そういったIRと地域の好循環を産むことによって、地域活性化を見込むことが出来ます。
カジノ法案(IR推進法案)の問題点
続いて、カジノ法案のデメリットについても見ていきます。
特にカジノ法案は賛否が大きく分かれており、2021年のアンケート調査では意見がほぼ半々に分かれるといった結果が出ているほどです。
そのため、デメリットについても詳しく解説します。
治安の悪化
まず「治安の悪化」と言う懸念について解説します。
IRがショッピングモールや映画館などの娯楽施設を備えていると言ってもやはり一番大きな収益が見込まれるのは「カジノ」です。
カジノと言うとギャンブル・賭博といったイメージが強く、特に青少年がギャンブルを知ると素行が悪くなり地域の治安が悪化してしまうのでは…と考える方も多いです。
また、暴力団などの反政府組織の介入を懸念する方もいます。
IR整備法では「適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ事業」の推進を掲げており、暴力団員の締め出しやカジノ施設の治安維持について地域の警察と連携を図りながら取り組むことを明記していますが、なお不安視する方も少なくありません。
ギャンブル依存症の増加
また、最も分かりやすいデメリットは「ギャンブル依存症の増加」です。
日本は競馬・競艇・パチンコなど様々なギャンブルが楽しめますが、「ギャンブル依存症対策」については後手に回っていると言わざるを得ません。
「カジノ」という賭博施設が追加されることで依存症の人物が増えてしまう、といった懸念は当然です。
これについては政府が明確に規制を打ち出しており、「最新鋭の技術を駆使した入場規制」「1週間・1ヶ月あたりの回数制限」「入場料の回収」といった制限を加えることでのめり込みを防止する狙いです。
また、現在既に日本におけるギャンブル依存症対策は始まっており、例えばパチスロの「高射幸性機」が撤去されたのもIR法案によるものです。
マネーロンダリング
また、ギャンブルや賭博はとにかく暴力団や反社会組織との繋がりが深いと言うイメージが強く、「マネーロンダリングの場として利用される」といった懸念もあるようです。
「カジノ事業者」「ゲームメーカー」「ディーラー」全ての従業員が犯罪組織に関与していないと認められない限り、そのカジノでは遊べない…と考えるのは当たり前と言えます。
IR整備法では、IR事業者はカジノ管理委員会から3年更新の免許を取得する必要があり、またその他のカジノ事業関係者(主要株主等、カジノ施設供⽤事業者、施設⼟地権利者、カジノ関連機器メーカー等)においても免許・認可制にすることが定められています。
また、暴力団員のカジノ施設立ち入りの禁止、カジノ施設の従業者の規制についても定められています。
カジノ建設候補地

IR整備法では、全国に設置できるIRは3施設(1施設あたりカジノは1箇所のみ)と定められており、現在は「大阪」と「長崎」が建設候補地として手を挙げています。和歌山も建設候補に挙げられていたのですが、資金計画の懸念により取り止めになっています。
大阪IRについては2022年に区域整備計画が可決し、大手カジノのMGM社による人材育成やギャンブル依存症対策の条例案を提出するなど活発な動きが見られます。
長崎IRについては佐世保市のハウステンボスに誘致が進められており、西九州新幹線の開業もあって追い風と言えるでしょう。
ただし、どちらのIRにも反対運動が続いており、市民団体が住民訴訟を起こすなどの動きも見られます。
カジノのオープンはいつ?
「いつIRやカジノはオープン予定なの?」という疑問について、現状を説明します。
2018年にIR整備法が成立した際は「2026年開業を目指す」という目標だったものの、現在は新型コロナウイルスの影響で計画が一度白紙に戻されました。
2022年4月に大阪府・市と長崎県から申請されたIR区域整備計画を受理したばかりであり、現在のオープン日については全く明らかになっていません。
なお、大阪IR・長崎IR共に誘致に向けた施策は着々と進んでおり、早い開業の可能性も高いです。
しかし、少なくとも2026年より前にIRがオープンすることは難しいと言えるでしょう。
カジノが開業した場合の規制
カジノが開業した場合に実施される規制については、「IR実施法(IR整備法)」で定められています。
まず「入場規制」についてですが、IR実施法では「連続する7日間のうち3日以上、28日間のうち10日以上」入場することは出来ないと定められています。これはマイナンバーカードなどの確認書類で管理すると決められています。
また、日本人や在日外国人のカジノ入場料は「6,000円」と定められています(外国人観光客の入場は無料)。これは日本がモデルケースとしているシンガポールを参考に定めたもので、ギャンブル依存症対策の一環として徴収されます。
反社会的勢力の排除のため、IR事業者を免許制、またカジノ事業者・カジノメーカー・従業員についても許可制や適切な規制を行うことが定められています。
今後の展開について
2016年に「IR推進法」、2018年に「IR整備法(IR実施法)」が成立し、また同年にはギャンブル等依存症対策基本法が定められました。
新型コロナウイルスの影響で一時は計画が白紙状態に戻ったものの、2022年には大阪・長崎の自治体が候補地として手を挙げ、正式決定を待つ時期となっています。
他の自治体が手を挙げていないことから、ほとんど大阪IR・長崎IRについては認可される予定と言えます。
今後はIR事業者を各自治体が決定し、自治体と事業者がタッグを組んでIR開発に着手します。
統合型リゾートが建設・完成すれば、晴れて開業…と言う流れになります。